お知らせ 開催スケジュール
第37回 高遠シンポジウム 要旨
『制御系としての生命』
現地開催:東京晴海 会場 L stay & grow Harumi
WEB開催:Microsoft Teams
■1日目■
13:05~
九州大学 基幹教育院
教授 太田 訓正 先生
真核細胞誕生時におけるリボソームタンパク質の役割
次に、「乳酸菌の何が細胞に多能性を付与するのか」という問いに着目しました。そこで、mRNA翻訳装置として知られるリボソームを線維芽細胞へ導入し、single-cell RNA-seq、ATAC-seq、ChIP-seqによる解析を行った結果、リボソームが宿主細胞の形質転換を誘導する主要因であることを明らかにしました。
現在、これら一連の細胞形質転換に関与するリボソームタンパク質の同定を進めています。これまでに、複数のリボソームタンパク質が線維芽細胞の形質転換を誘導し、脂肪細胞や軟骨細胞などへの分化を促進することを確認しています。本講演では、細胞形質転換を引き起こすリボソームタンパク質の分子機構に焦点を当て、得られた知見についてご紹介します。
References
Ito N, Katoh K, Kushige H, Saito Y, Umemoto T, Matsuzaki Y, Kiyonari H, Kobayashi D, Soga M, Era T, Araki N, Furuta Y, Suda T, Kida Y, and Ohta K. Ribosome incorporation into somatic cells promotes transdifferentiation towards multipotency. Scientific Reports 8(1), 1634. (2018)
Ohta, K., Kawano, R., and Ito, N. Lactic acid bacteria convert human fibroblasts to multipotent cells. PLoS ONE, 7(12), e51866. (2012)
14:00~
京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点
教授 見學 美根子 先生
脳皮質の発達を実現した動くニューロンの戦略
14:55~
大阪大学 特別栄誉教授
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 特任教授
特別栄誉教授 坂口 志文 先生
制御性T細胞:その発見から新しい免疫医療に向けて
Tregは、ヒトも含めて正常動物の末梢CD4+T細胞の約10%を占めています。正常な動物からTregを除去すると、甲状腺炎、I型糖尿病など、ヒトの自己免疫病と酷似した様々な病変やアレルギーが自然に発症してきます。また、腸内細菌に対する免疫反応が惹起されて炎症性腸炎が起きてきます。Tregを補えば、このような異常、過剰な免疫応答を抑制することができます。実際ヒトでも、Tregの量的、機能的異常の結果、重篤な自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギーを発症してくる病気があります。また、日本も含めて先進国では感染症の頻度が下がるに従って、近年自己免疫病、アレルギー、炎症性腸炎などの疾患が増えてきています。衛生的な環境では強い免疫反応を起こす必要がなくなり、それに応じてTregの免疫抑制能が弱くなる結果、このような免疫疾患が増えてくるのかもしれません。
一方、がん組織中のTregを除くと、がん細胞に対する免疫応答を惹起・亢進させることが可能で、実際、Tregを標的とするがん免疫療法の臨床応用が進んでいます。反対に、Tregを抗原特異的に増やすことによって、移植臓器の安定的な生着また移植臓器の拒絶反応の抑制が可能です。
本講演では、自己・非自己を区別する免疫の仕組み、そして自己免疫病、アレルギーなどの免疫病、がん、臓器移植、などに対する免疫医療の展望についてお話しします。
ポスター発表者によるフラッシュトークとポスター発表
■2日目■
09:00~
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
教授 中島 敬二 先生
根の自在な成長を支える分子と細胞のダイナミクス
植物発生学における主要なモデル実験系として、シロイヌナズナの根が広く用いられている。シロイヌナズナの根は植物に普遍的なすべての細胞タイプを非常にシンプルな形で備えており、また細胞の分裂、伸長、分化が起こる場が空間的に分離している。これらの利点を活かすことで、シロイヌナズナの根を用いた研究から、植物の発生や成長制御に通底する基盤的なメカニズムが明らかにされて来た。
一方でシロイヌナズナの根を、環境に応じた動的な発生・成長制御の研究に利用するには大きな技術的障害があった。根の環境受容や成長駆動系が集約されている根端が、根の伸長に伴って速やかに移動してしまうため、長時間かつ高倍率な連続観察ができないという問題である。我々は、この課題を解決するため、重力方向に沿って垂直に伸長するシロイヌナズナの根端を自動的に追尾しながら、その内部の3次元動態を、時間軸に沿って高い解像度でイメージングするための顕微鏡システムを開発した。また得られた膨大な4D画像データから、細胞核の分裂状態や位置を自動的にセグメンテーションするAIツールや、反復的な細胞分裂が生み出す細胞系譜を自動的に紐づけるアルゴリズムを開発した。本講演では、これらの可視・定量化ツールを導入することで初めて見えて来た、根の自在な成長を支える分子と細胞のダイナミクスや、それらの背後にある遺伝的制御機構について紹介したい。
09:55~
北海道大学 遺伝子病制御研究所
教授 野田 展生 先生
ATG因子群が駆動するオートファゴソーム形成の分子機構
References
1) Fujioka, Y., Alam, J. M., Noshiro, D., Mouri, K., Ando, T., Okada, Y., May, A. I., Knorr, R. L., Suzuki, K., Ohsumi, Y. and Noda, N. N. Phase separation organizes the site of autophagosome formation. Nature 578, 301-305 (2020).
2) Fujioka, Y., Tsuji, T., Kotani, T., Kumeta, H., Kakuta, C., Shimasaki, J., Fujimoto, T., Nakatogawa, H. and Noda, N. N. Phase separation promotes Atg8 lipidation and vesicle condensation for autophagy progression. Nat. Struct. Mol. Biol. 32, 2285-2295 (2025).
3-1) Osawa, T., Kotani, T., Kawaoka, T., Hirata, E., Suzuki, K., Nakatogawa, H., Ohsumi, Y. and Noda, N. N. Atg2 mediates direct lipid transfer between membranes for autophagosome formation. Nat. Struct. Mol. Biol. 26, 281-288 (2019).
3-2) Matoba, K., Kotani, T., Tsutsumi, A., Tsuji, T., Mori, T., Noshiro, D., Sugita, Y., Nomura, N., Iwata, S., Ohsumi, Y., Fujimoto, T., Nakatogawa, H., Kikkawa, M. and Noda, N. N.. Atg9 is a lipid scramblase that mediates autophagosomal membrane expansion. Nat. Struct. Mol. Biol. 27, 1185-1193 (2020).
10:50~
筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
教授 丹羽 隆介 先生
液性因子による動物の発生と生理の制御:ショウジョウバエと寄生蜂の研究から
前半では、昆虫におけるカルシウムイオン恒常性の制御機構について述べる。昆虫は脊椎動物のような骨や副甲状腺ホルモンを持たないにもかかわらず、体液中のカルシウムイオン濃度を厳密に維持している。我々は、ショウジョウバエの遺伝学を駆使して、カルシウム貯蔵器官と、そこからのカルシウム動員に必要な神経ペプチドを同定し、昆虫における新たなカルシウム恒常性維持機構を明らかにした。
後半では、ショウジョウバエに寄生する寄生蜂が持つ毒タンパク質による宿主発生・生理の操作機構について紹介する。寄生蜂は宿主の栄養を利用して生活するハチ目昆虫であり、昆虫類約100万種の約20%を占めると推定される、地球上で最も繁栄している生物群の一つである。しかし、試料の小ささや飼育の困難さから、寄生蜂の寄生戦略を支える分子機構には未解明な点が多い。そこで我々は、ショウジョウバエ寄生蜂Asobara japonicaをモデルとして研究を進めてきた。その結果、最近我々は、宿主ショウジョウバエの発生を巧みに操作する毒タンパク質を同定した。現在、この毒タンパク質の作用機序と、多様なショウジョウバエ種およびAsobara属寄生蜂における毒タンパク質およびその作用機構の進化を明らかにするべく、比較解析を進めている。
References:
1. Okamoto N, Mizuno Y, Watanabe A, Kohsaka H, Niwa R. Neuroendocrine control of calcium mobilization in the fruit fly. Nature 649: 122–130, 2026. doi: 10.1038/s41586-025-09670-z
2. Kamiyama T, Shimada-Niwa Y, Mori H, Tani N, Takemata-Kawabata H, Fujii M, Takasu A, Katayama M, Kuwabara T, Seike K, Matsuda-Imai N, Senda T, Katsuma S, Nakamura A, Niwa R. Parasitoid wasp venoms degrade Drosophila imaginal discs for successful parasitism. Science Advances 11: eadq8771, 2025. doi: 10.1126/sciadv.adq8771
*予告なく変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
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