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第29回高遠・分子細胞生物学シンポジウム

データから生命のダイナミクスを知る

2017年08月24日(木)~25日(金)

開催概要

テーマ データから生命のダイナミクスを知る
開催期間 2017年08月24日(木)~25日(金)
開催場所 高遠さくらホテル
http://www.ina-city-kankou.co.jp/cms/modules/tinyd4/index.php?id=3

〒396-0214
長野県伊那市高遠町勝間217番地
TEL.0265-94-2200地図を見る
後援 株式会社 医学生物学研究所
参加費 9,000円 (宿泊代、夕・朝食 込み)
申込方法 参加受付フォームからのお申し込み FAXでのお申し込み(FAX用紙ダウンロード)
申込締切日 2017年07月28日(金)
備考 シンポジウム終了後、一泊二日(8月25-26日)でのレクリエーションを企画しております。 参加ご希望のかた、ご興味をお持ちのかたは、シンポジウム参加お申込み時に “その他 ご希望・ご意見”欄へ 「レクリエーションに興味あり」 とご記載ください。

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プログラム

2017年8月24日-25日

卵子形成を再現するin vitro系の開発
尾畑 やよい [東京農業大学 生命科学部 バイオサイエンス学科]
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 ほ乳類では、着床直後に卵円筒期胚のエピブラストから、将来、精子や卵子に分化する始原生殖細胞が生じます。エピブラストから始原生殖細胞が発生するこの過程は体外培養で再現されるようになり、始原生殖細胞の分化機構が徐々に解明されつつあります。また、これによってマウスではES細胞やiPS細胞などからも始原生殖細胞の分化誘導が可能となりました。一方、始原生殖細胞から精子や卵子が分化する過程は、体外培養で再現することができずにいました。
 始原生殖細胞から卵子が分化する過程では、減数分裂期への移行と完了、卵巣内の支持細胞と卵母細胞による卵胞形成、卵母細胞の成長、ゲノムインプリンティングの確立、受精能や発生支持能の獲得など様々なイベントがあり、これらを全て完了した成熟卵子のみが、受精後に次世代を残す、つまり生殖に貢献することができます。一方、顕微授精が普及する昨今では、フリーズドライ処理後の精子でも生殖に貢献することができます。卵子が生殖細胞として機能するためには、精子と比較して非常に多くの要件を満たさなくてはいけないことになりますが、成熟卵子が分化するための必要十分条件はあまり明らかにされていません。また、ほ乳類の雌では雄と異なり、卵巣内に恒常的に体細胞分裂をして卵母細胞を供給する幹細胞がなく、卵巣内に存在する卵母細胞しか生殖資源になりえません。卵子は精子と比較して数的にも貴重なことがわかります。
 私たちはこれまでに、成熟卵子の分化機構を解析・理解し、卵母細胞の高度利用技術に活用させたいと考え研究を進めてきました。卵子形成を再現するin vitro系や簡便な遺伝子導入方法が開発されれば、卵子形成過程を終始モニターしたり、遺伝子の機能解析を今よりも容易に行ったりすることができるため、卵子形成機構の解明に役立てることができます。また、体細胞分裂期の始原生殖細胞から卵子を産生することが可能になれば、卵子の増産につながることも期待されます。
 本講演では、私たちが構築した卵子形成を再現するin vitro系について紹介させて頂きます。

ヒストンコードを読み解く:エピプロテオミクスからのアプローチ
川村 猛 [東京大学アイソトープ総合センター プロテオミクス研究室]
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 DNAの塩基配列の変異によらない後天的な遺伝子発現制御であるエピゲノム制御は、可逆的なDNAのメチル化修飾、ヒストンタンパク質の メチル化、アセチル化、ユビキチン化等の翻訳後修飾やnon-coding RNA などによって制御されている。エピゲノム変化は増殖、分化、発生などの生体の維持だけでなく、がんや生活習慣病などの様々な疾患に関与する。我々の研究室ではその中でヒストンを標的としてエピゲノム解析を行なっている。染色体を構成するクロマチンはヌクレオソームを基本単位としており、ヌクレオソームはヒストン H2A, H2B, H3, H4 が各 2 分子からなるコアヒストンとそれに巻き付いた DNAから構成される。それらの修飾状態によりヌクレオソームが凝集して遺伝子発現が抑制されたヘテロクロマチン構造や、ヌクレオソームの密度が低く遺伝子発現が活発な領域であるユークロマチン構造をとる。これらの構造にはコアヒストンからがつきだしたN末端側のテールと呼ばれる部分の修飾が重要な役割を果たす。ヘテロクロマチンではヒストンH3K9, K27のメチル化が多く観察され、ユークロマチンではヒストンのアセチル化、H3K4のメチル化が観察される。それらの修飾に対しリーダータンパク質と呼ばれるタンパク質群が結合し遺伝子発現を制御しており、これらの制御には単独の修飾だけではなく修飾パターンが重要と考えられる。現在我々はこのテール部分のパターンを解析するための解析法の確立に注力している。ヒストンタンパク質はリジン、アルギニンが多く塩基性が高く、テール部分の長さは20〜60アミノ酸である。一般的なプロテオミクスではリジン・アルギニン残基特異的切断酵素トリプシンを用いて、質量分析計で感度良く測定出来る15アミノ酸程度にして解析を行う。しかしながらそれではヒストン修飾パターンの解析には適さない。そこで我々は、電子転移解離(Electron transfer dissociation: ETD)法を用いたミドルダウンプロテオミクスという手法で LC/MS/MS を行なっている。ヒストン H4 については解析法を確立し細胞周期での修飾パターン変動を報告した。現在H3テールについて同様の手法で解析を行っている。H3テールは約50アミノ酸で理論的な修飾部位は24カ所あり、1アミノ酸に対し複数の組み合わせが考えられるのでその組み合わせは膨大であり、報告されている修飾を掛け合わせるだけでも80兆通りを越える。それらの組み合わせの中から正確に修飾種と修飾部位を決定するための試料調製法、測定法、データ処理法とソフトウェア開発の取り組みについて紹介する。

上皮の恒常性維持を司る細胞競合の分子基盤
大澤 志津江 [京都大学大学院 生命科学研究科 システム機能学]
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 細胞競合とは、同種の細胞間において生体内環境(組織)への適応度を競合する現象であり、相対的に適応度の低い細胞(loser)が細胞死を起こして組織から排除され、適応度の高い細胞(winner)がその場に置き換わる、多細胞コミュニティーにおける「適者生存」競争であると考えられている。最近では、この細胞競合現象は、発生過程における優良細胞の選択や癌原性細胞の排除など、多様な生命現象に関わることが示唆されている。私たちはこれまで、ショウジョウバエ上皮をモデル系として、頂端-基底極性(apico-basal極性)が崩壊した上皮細胞が細胞競合により組織から排除される現象に着目してその分子機構を解析してきた。本セミナーでは、細胞競合の分子機構を紹介するとともに、その生理的意義についても議論したい。

[References]
1. Ohsawa et al., Elimination of oncogenitc neighbors by JNK-mediated engulfment in Drosophila. Developmental Cell, 20, 315-328, 2011
2. Kunimasa, Ohsawa, Igaki, Cell competition: the struggle for existence in multicellular communities “New principles in Developmental Processes” Springer, 27-40, 2014
3. #Yamamoto, #Ohsawa (#equal contribution) et al., The ligand Sas and its receptor PTP10D drive tumour-suppressive cell competition. Nature, 542, 246-250, 2017

エングラムから探る「記憶が関連づけされる仕組み」
井ノ口 馨 [富山大学大学院 医学薬学研究部 生化学講座]
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 私たちはここ数年、記憶の連合(関連づけ)のメカニズムの解明に取り組んできました。ヒトは脳に蓄えられているさまざまな記憶情報を関連付けることで、一つ一つの記憶から知識や概念を形成していきます。記憶が関連づけられる仕組みの理解は、知識や概念の形成といったヒトの高次脳機能の解明への第一歩になると考えられています。
 近年、「記憶」という科学の対象としてはあいまいな現象の物理科学的な実体「記憶エングラム(記憶痕跡)」がその姿を見せつつあります。すなわち、記憶は脳の中の特定の神経細胞集団という形で符号化されて蓄えられています。経験時に活動した特定の神経細胞集団(記憶エングラム)として記憶は符号化され、何らかのきっかけでその記憶エングラムが再び活動するとその記憶が想起されます。異なる記憶には異なる記憶エングラムが対応します。
 私たちはマウスを用い、個々の記憶のエングラム細胞群を同定し、かつ、それらを光遺伝学を用いて人為的に操作することで、異なる記憶を組み合わせマウスが体験していない新しい記憶を作り出すことに成功しました。また、脳の海馬や扁桃体において、二つの記憶が関連づけられるときにそれぞれに対応する記憶エングラム同士の間の重複が記憶が連合しない場合に比べて大きく増大することを見いだしました。
 さらに、私たちは重複した記憶エングラムは記憶の関連づけ(連合)のみに関与し、それぞれの記憶を思い出すためには必要ではないことを明らかにしました。すなわち、連合した2つの記憶を思い出した時に、重複した記憶エングラムの活動のみを光遺伝学的に抑制すると、2つの記憶の間の連合が抑制される一方で、それぞれのオリジナルの記憶は正常に想起することができました。これにより、2つの記憶エングラムが同時に活動し重複することが記憶の連合メカニズムであることが明らかになりました。さらに、重複したエングラムは、「通常ならすぐに忘れてしまうようなささいな出来事でも、その前後に強烈な体験をした場合には、長く記憶として保存される現象」である行動タグの成立にも重要であることが明らかになりました。
 これらの成果は、記憶エングラムを人為的に操作することで、記憶同士の関連づけを自在に操作できることを示すと共に、知識や概念の形成の理解への第一歩となると期待されます。

[References]
1. Yokose et al. (2017) Overlapping memory trace indispensable for linking, but not recalling, individual memories. Science, 355, 398-403.
2. Nomoto et al. (2016) Cellular tagging as a neural network mechanism for behavioral tagging. Nature Communications, 7: 12319.
3. Ohkawa et al. (2015) Artificial association of pre-stored information to generate a qualitatively new memory. Cell Reports, 11, 261-269.
4. Okada et al. (2009) Input-specific spine entry of soma-derived Vesl-1S protein conforms to synaptic tagging. Science, 324, 904-909.
5. Kitamura et al. (2009) Adult neurogenesis modulates the hippocampus-dependent period of associative fear memory. Cell 139, 814-827.

交感神経によるリンパ球の体内動態の制御
鈴木 一博 [大阪大学免疫学フロンティア研究センター 免疫応答ダイナミクス研究室]
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 神経系が免疫系の調節に関わっていることは古くから指摘されてきた.しかし,そのメカニズムは今なお十分に理解されていない.交感神経は,副交感神経とともに自律神経系を構成し,循環,呼吸,消化をはじめとする生理機能を協調させることによって,生体の恒常性を維持している.最近の我々の研究から,交感神経がリンパ球の体内動態の制御にも関与していることが明らかになった.リンパ球はリンパ節からリンパ液中に脱出し,リンパ液が血液に合流するのに伴って血流に乗り,血液を介して再びリンパ節に戻るというかたちで全身をめぐっている.我々は,リンパ節に投射する交感神経からノルアドレナリンが放出されると,リンパ球に発現するβ2アドレナリン受容体が活性化するのに伴って,特定のケモカイン受容体の反応性が上昇する結果,リンパ球のリンパ節からの脱出が抑制されることを見出した.さらに,交感神経活動の概日リズムに同期してリンパ球のリンパ節からの脱出頻度が変化することによって,リンパ節における免疫応答に日内変動が生まれることもわかった.本講演では,これらの知見にもとづいて,交感神経によってリンパ球の体内動態が制御されることの生物学的な意味について議論したい.

[References]
Nakai, A., Hayano, Y., Furuta, F., Noda, M. and Suzuki, K. Control of lymphocyte egress from lymph nodes through β2-adrenergic receptors. J. Exp. Med. 211: 2583-2598, 2014.

Suzuki, K., Hayano, Y., Nakai, A., Furuta, F. and Noda, M. Adrenergic control of the adaptive immune response by diurnal lymphocyte recirculation through lymph nodes. J. Exp. Med. 213: 2567-2574, 2016.

生理的な体型変化に適応するための表皮幹細胞ダイナミクス
豊島 文子 [京都大学ウイルス・再生医科学研究所 生体システム研究部門 組織恒常性システム分野]
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 皮膚は、体液の蒸発を防ぎ、紫外線や病原体感染などの様々な外界刺激から体を保護する生体バリアである。一方、皮膚は、生理的な体型変化に適応するため、その表面積を柔軟に変化させることが知られていますが、その仕組みは分かっていませんでした。今回、急速に拡張する妊娠期母マウスの腹側皮膚を例として、表皮幹細胞の対称・非対称分裂が、皮膚の表面積の調整に重要であることを紹介します。
 皮膚は表皮、真皮、皮下組織からなり、表皮は角質層、顆粒層、有棘層、基底層からなる重層構造をとっている。表皮の基底層には、増殖能と未分化能をもつ表皮幹細胞が存在し、常に新しい細胞を供給している。それらの細胞が、基底膜から外れて上層に移行し、段階的分化過程を経て、最終的に垢として剥がれることで皮膚は新陳代謝を繰り返し、その恒常性を維持している。基底細胞の分裂には方向性がある。すなわち、基底膜に対して平行あるいは垂直に分裂し、前者は皮膚の上皮シートの拡大に寄与し、後者は皮膚の重層構造の形成と新陳代謝に寄与している。
 私たちの研究室では、妊娠期母体マウスの腹側皮膚において、表皮幹細胞が基底膜に対して平行に非対称分裂し、増殖能の高いTransit amplifying (TA)細胞を産生すること、このTA細胞がさらに平行分裂することで皮膚の拡張が誘導されることを発見した。TA細胞の産生に必須の転写因子を同定し、この遺伝子を母体マウスの腹側表皮でノックアウトすると、妊娠期腹側の皮膚拡張が顕著に抑制されることを見出した。また、この母マウスの胎児は、体のサイズと体重が低下する傾向が認められたことから、母マウスの表皮の拡張は胎児の成長にも影響を与えることが示唆された。さらに、妊娠期腹側表皮の表皮幹細胞とTA細胞のダイナミクスは、真皮からのシグナルに依存することが分かった。
 これらの知見とともに、妊娠期における表皮幹細胞のダイナミクスを皮膚の創傷治癒に応用する可能性についても議論する。

遺伝統計学で迫る疾患病態の解明とゲノム創薬
岡田 随象 [大阪大学大学院医学系研究科 遺伝統計学]
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「いかに、早く、安く、正確にゲノム配列を解読するか」がこれまでのゲノム科学の目標であった。しかしNGS技術でその目標が達成されつつある今、研究のボトルネックは「どうやって、早く、安く、確実に解読したゲノム配列の意味を解釈するか」へとシフトしつつある。遺伝統計学(statistical genetics)とは、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から研究する学問分野である。次世代シークエンサー(next generation sequencer; NGS)やゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)に代表されるゲノム解析技術の著しい発達により、膨大なデータが得られる時代が到来している。一方で、一次的なデータ解析処理を施され、ゲノム配列情報やエピゲノム修飾情報として蓄積された大容量のデータを適切に解釈し、社会還元するためのデータ解析学問へのニーズが高まっている。遺伝統計学は多彩な学問分野におけるビッグデータの分野横断的な統合に適した学問であり、近年その重要性が認識されている。我々は、大規模ヒト疾患ゲノム解析により同定された数多くの疾患感受性遺伝子の情報を、多彩な生物学・医学データベースと統合することにより、新たな疾患病態の解明や、疾患バイオマーカーの同定、疾患疫学の謎の解明、ドラッグ・リポジショニングを通じた新規ゲノム創薬、個別化医療の推進に貢献できることを明らかにしてきた。特に、疾患感受性遺伝子情報に基づき直接的に創薬標的を探索する遺伝統計解析は、ゲノム創薬の新たな方向性を示したものとして注目を集めている。本邦では、近隣諸国と比較して遺伝統計学の専門家が不足していることが指摘されている。「遺伝統計学・夏の学校@大阪大学」の開催など、我々が取り組んでいる若手研究者の人材育成についても紹介したい。

[References]
1. Okada Y, et al. Contribution of a Non-classical HLA Gene, HLA-DOA, to the Risk of Rheumatoid Arthritis. Am J Hum Genet 2016;99:366-374.
2. Okada Y, et al. Construction of a population-specific HLA imputation reference panel and its application to Graves’ disease risk in Japanese. Nat Genet 2015;47:798-802.
3. Okada Y, et al. Genetics of rheumatoid arthritis contributes to biology and drug discovery. Nature 2014;506:376-381

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開催場所
高遠さくらホテル
http://www.ina-city-kankou.co.jp/cms/modules/tinyd4/index.php?id=3

〒396-0214
長野県伊那市高遠町勝間217番地
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